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ヒナタノオト工芸帖

日本橋小舟町の工芸ギャラリー・ショップ「ヒナタノオト」の作品ノオト

はがき

一葉のはがきが届いた。
会社を退かれてもう10年以上経った大変お世話になった方から。
この春、新たなご縁が生じて葉書をいただいた。

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もう15年以上も前、私事で行き詰まり、
会社も辞さねばならないと思い定めていた時、
所属していた会社の上司であるこの方の言葉に救われたことがある。
上司と言っても大きな会社の役員で、同じ業務に就いていたわけではない。
社内的には私からは雲の上の人であったのだけれど、
私が担当していたギャラリーへの理解と応援から、
親しく接してくださっていた。

「窮すれば通ず」
その方が私に与えてくれた言葉がこれだった。
八方ふさがりで、呼吸も浅くしかできなくなっていた私を役員室に呼んで、
易経の話をしてくださった。
正直なところ、詳しい意味はわからなかった。
けれど、窮するところにいるようで、実は必ず通じるところに出られるのだから、
あなたはもう、通じるところに向かっているのですよ。
そう深くあたたかな目を向けて励ましてくださった。
意味の深さがわからなくても、心をこめて伝えられる励ましは、
意味を超えて、私に力を与えてくれた。

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いただいた葉書には、その方が作ったホームページアドレスが記されてあった。
そこには易経のページがあって、易経について学ばれた経緯に胸をつかれた。
明るく華やかな笑顔が印象的なその方が、
ご家族のことなどで、激務と並行して、どんなに大変な日々を送ってこられたか。
淡々と記されてあるがゆえに、その日々の重さをかえって思った。
そして、その果てにたどりついた、会社人として、そして人としての包容力を思った。

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言葉は言葉でしかないのだけれど、
その言葉に至るまでの道のりが、言葉に真実を宿すのだろうか。

ひとひらの葉書。
それを綴ったひとりのひと。
その生き方に励まされている。
とてもこの方のようにはなれもしないけれど、
せめて目の前に窮している人がいたならば、
あなたはもう、通じるところに向かっているのですよ、
そう伝えられるであろうか。
そして、私自身も、そう思える人であるだろうか。

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