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ヒナタノオト工芸帖

日本橋小舟町の工芸ギャラリー・ショップ「ヒナタノオト」の作品ノオト

まあるいポット、まあるい思い

cha

(photo chiharu hagihara)


「千春さんのポットはありますか?」

大人の男の人の声。
はい、あります。
とのこちらの答えに
「では、夕方お寄りします」
と電話は切れた。

窓の外の闇の気配にキャンドルの明かりが映える頃、
コートをまとった男性は、店内に入るとまっすぐ萩原千春さんのポットの前に立った。

幾つかのポットや急須を並べ、ご希望を伺い、質問に応じ、
ひとつのポットをお選びいただいた。
ご進物用に丁寧に包装する。

「千春さんの作品をよくご覧になられるのですか?」
とわたしが尋ねると、
「本を読んでぜひ見てみたいと思ったんです」
とほほえんでくださった。
「千春さん」と親しげに言われたので、お知り合いかと思ったのだけれど、
なるほど、私は本で萩原さんとではなく「千春さん」と書いていた。

選ばれるときの陶磁器への触れ方で、焼き物がお好きなことがよくわかった。
いいものをたくさん見ている方だろう。
そのような方が、本を読んでこうして来てくださったこと。
ありがたい気持ちでいっぱいになった。

「実は新潟から東京へ出張に来て、ぜひお寄りしたいと思ったのです」
帰り際、その男性はさりげなく伝えてくれた。
選んでくださった、まあるいポット。
千春さんの手になるそのポットは、
そんな思いを寄せてくださった方の気持ちに、きっと応えてくれる。
そして、そう確信できるものを扱えることに、
まあるい気持ちに包まれていた。

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