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ヒナタノオト工芸帖

日本橋小舟町の工芸ギャラリー・ショップ「ヒナタノオト」の作品ノオト

森の話、木の話。

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土曜日、初日。
たくさんのお客様に恵まれました。
ありがとうございました。
長南さんも初個展ということで、どれほど喜ばれたことでしょう。
ますます次への原動力になることと思います。
ヒナタノオトからも御礼申し上げます。

日曜日は雨だったこともあって、しっとりとした展開になりました。
けれどもその分、濃やかなやりとりが交わされたように思います。

一番そう感じたのは、長南さんの新作のエナメルシリーズに
目を留められた方が多かったこと。
たくさんのお客様がいらっしゃる中では、
具象的なモチーフに目を留めていただく傾向がありますが、
ゆっくりとご覧いただくと、
この不思議な白の世界に引き込まれる方が多かったように思いました。

エナメル。
いわゆる七宝、ですね。
ガラス質のものを金属にかけて熱で溶かしてまとわせる。

七宝というと、ある固定されたイメージがあるかもしれませんが、
長南さんが今回取り組まれたものは、白を基調にしながら、
積もっていく時を表わすような、豊かな色調が奏でられたもの。

自然光で見てみると、貝のような、
何か自然の造形物がまとった色のような奥行きを感じます。

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こちらの画像は、長南さんのhpのworksからいただいたもの。

素材:K18・エナメル
サイズ:約#6・#10・#12の3種
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小さなつぶが連なった細いリング。
磨き仕上げのものが1本&エナメルがかかったものが1本。
形は一緒だけれど、真新しいリングと、とても時間を経てきたようなリングの2本の間には
長い時間のひらきがあるようです。


と、記されています。

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こちらはリングや、ヘッドを付けたペンダントも。

素材:SV925・エナメル 金具:SV925
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陶器のような、砂糖が溶けたようなトロリとした質感。
黄色がかったところや、黒く石のような風合いが出たところ、
エナメルが剥がれてシルバーが見えていたり。
どこかで発掘され古ぼけたお店でずっと忘れられていたかのような、
蓄積された時間や空気を感じさせます。


::::

創作の森。
作家はその心の中に、森を持っているように感じます。
心の中に生えている「木」を、手を使って他者が触れられる「木」にしていく。
その「木」が群生して森となったとき、展覧会という形になるのかもしれません。

長南さんは、かなり広やかな森をもった作家ですね、きっと。
オリーブの実から生まれたフェミニンな美しさから、
古い鉄クギをたたいて黒光りさせたちょっとパンチの効いた作品。
船や家といった、具象の楽しさから、エナメルによる抽象の美しさ。
ポルトガル語を刻んだ、思いをひっそりと灯すような作品も。

広やかな森の中に、一見つながりのないような木がポツン、ポツン、と立っていたら、
それは、ちょっと不思議な気がするかもしれません。
長南さんが作品をかたちにし始めたとき、もしかしたら、その幅の広さが、
見る人に不思議な思いを抱かせたかもしれませんね。

でも、どれもが、突拍子もないものではなくて、
広やかな森の中の、端と端に生えてきた木だったのかもしれません。
制作を続けるうちに、一本、一本の木が適所に生えて、
作品群という森を豊かに構成させていく。
今回の森(展覧会)では、いっそう広やかな森へと育まれていく息吹きを感じました。

今回新しく生まれたエナメルの「木」。
これも長南さんの森の中で、たしかなエリアになっていくのではないでしょうか。

さて、この森の中で、どんな「木」に心響いていただけるでしょうか。

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