ヒナタノオト工芸帖

日本橋小舟町の工芸ギャラリー・ショップ「ヒナタノオト」の作品ノオト

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北陸にてvol.3

久しぶりに訪ねた加賀の村。

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小川のせせらぎも、ここならではの穏やかな調べ。

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水辺のささやかな土手には一輪草が目を覚まして。

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その上には端正な和みの家が迎えてくれました。

橋本薫さん。
もう15年も前、俳句に打ち込んでいたとき。
吉原幸子さんと新川和江さんが主宰されていた詩の雑誌の
俳壇にお互いが投句していて知り合えたひと。

職業欄には「陶工」とあって、いったいどんな方だろうと思いを寄せて。。。
誰風でもない、知性と感性の響いた句を詠む女性の陶工。
数年ののち、加賀市の奥まった静かな村に訪ねる機会を得たのでした。

薫さんは夫君の俊和さんと共に、色絵磁器の器作りをされていました。
九谷焼としてもよく知られる須田青華さんのもとで修行をされて、
独立して曽宇窯として九谷の五彩、赤絵、
染付けなどの器を作る作家の方でした。

囲碁と音楽を愛し、渓流釣りや山菜採りを楽しみ、
自らの手になった器に丹精した和食を盛り込む俊和さん。
薫さんはと言えば、たいへんな読書家で、
フランス語と英語は原書で読み、古典に通じる知性のひと。
そのうえすらりとモデルさんのような風貌に、
最初は緊張してもいましたけれど、
おふたりそろって深い優しさにあふれた方だと
じきにわかってしまいました。
動くだけというかノウテンキな馬力ばかりの私を
なぜだかとても受け入れてくださって、
どこかで姉のように慕って時が過ぎました。

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九谷焼や色絵の器。
馴染みのない方も多いかもしれません。
そのひとつの理由は、もともと素晴らしいものだったものを、
高度成長期以来、機械化や量産で形骸化した九谷焼きや
色絵のものが氾濫したこともあるかと思います。
それらに慣らされてしまった目には、
本来の美しさが伝わりにくくなってしまったかもしれません。

私自身、金沢で陶芸と出会っておきながら、
九谷焼の美しさを石川県立美術館にある
古いものにしか感じなかったのも事実です。
出会える力がなかった、ということでしょうけれど。

:::

絵付けの器の美しさを知ったのは、薫さんたちの器に出会ってから。
大鉢、皿、湯のみにソバ猪口。
ざくろ、水の輪、魚に水草。
チューリップが描かれたのはコーヒー碗。
赤絵は使いこむほどに色が冴え、
染付けの藍色は料理を爽やかに映してくれて。
薫さんたちの器に料理を盛り付けておいしい食事をしているとき、
ああ、日本人でよかったなぁ。
としみじみ思います。

文様。
ひとは文様を描かずにはいられないのですね。
文様のひとつひとつに、人の営み、思いや願いが籠められている。
そんな文様のこと、もっと知りたいと思うのです。

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絵付け師でもある「陶工」の薫さんの文章で、ぜひそれらを綴ってほしい。
今回の訪問で、そんなお願いも叶いました。
薫さんのhpで新たにコンテンツを作ってもらい、
折々アップしてもらうことに。
深い知性の方だから、私は一読者の立ち位置でありつつ、
編集者の目も持って、伝わりやすいお手伝いができれば、と思っています。

う~ん、ほんとうに楽しみなのです。
陶磁器から見た文様のこと。
生活の器に人はどんな思いをもって、文様を呼び寄せたのでしょう。。。

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(赤絵の原料を磨っていました)

週末までには、薫さんの「曽宇窯」の作品、ヒナタノオトに到着します。
花の季節を前に、桜の文様のものも。
磁器に描かれた赤絵や色絵のすこやかな美しさ。
ぜひお手にとって感じていただければと思います。

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穏やかで深い微笑をたやさずにいつも迎えてくださった俊和さん。
もうこの世ではお会いできなくなったのでした。
一昨年の12月に永眠されて、伺いたいと思いながら、一年が経ってしまいました。

かけがえのないひとをなくされた薫さんとの再会は、
何もできなかった私には、心が泳ぐように定まらないものもあったのですが、
ただ俊和さんに手を合わせたい、そして少しでも薫さんと楽しいお話ができたら。
そんな思いを抱いて加賀に向かいました。

変わらずに美しい薫さんとたくさんの猫たち。
心優しいお隣の方々。
10年来通われているふたりの頼もしいお弟子さんたち。
なんと言葉にしてよいのか、うまく言えないのですが、
ただ、そう、心が安らいだのでした。
そして数時間、家のふもとに流れる小川のせせらぎの音に包まれて時をともに過ごせば、
薫さんのお仕事を通して、俊和さんにもずっとお会いできるのだという
あたたかな確信が心のまんなかに据わっていました。

美しいものをつくる。
それが誰かの喜びになる。

薫さんたちの仕事。
なんて幸福な仕事なのだろう。
そうあらためて思うのでした。

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