ヒナタノオト工芸帖

日本橋小舟町の工芸ギャラリー・ショップ「ヒナタノオト」の作品ノオト

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言葉の力

工芸帖から離れての長いつぶやきですので、
興味のない方はどうぞスルーしてくださいね。

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言葉の力

この夏から、いつもこのことがぐるぐると私の周りでまわっていました。
ひとつは、本作りの最終段階だったから、書き手として。
そして、もうひとつは、展覧会の小冊子を編集する編み手として。
人が書いたものを、読み手に渡す者として。


本は出版になって、小冊子も刷り上がり、その展覧会も無事に終わった。
けれど、言葉の力、ってなんだろう、という疑問の答えはまだ見つからない。
けれど、それは確かにあって、何ものかを征服するためのものではなく、
ほんとうに知りたい何かに近づくために、
人間に与えられたものなのではないだろうか。
というような想いもある。

では、ある意味、その道具ともいえる言葉を、どう正確に使っていくのだろうか、
道具は使い方次第で、よきものにも、あしきものにもなってしまう。
思いはぐるぐる巡ったままだった。


この仕事を始めて数年経って少し慣れた頃、そう30歳になったばかりだっただろうか、
展覧会会場に掲示するための文章を、ある作家から送ってもらった。
それはかなり癖のある文体で、かつ、あまり練って書かれたものに思えなかったので、
私は良かれと思ってそれを整え、その作家に確認のため送り返した。

それに対して、その作家はかなり長文の手紙を添えて、私をたしなめた。
文章はその人の息遣いのようなものだから、たとえ下手であっても、整えないでもらいたいと。
したたかに水を浴びせられたような、けれどもどこか温かな思いのこもったそのメッセージは、
以後、私の中に大切な一本の骨となっている気がする。


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10月の展覧会の前、小さな時間を見つけては耽読していたのは、
池田晶子著・暮らしの哲学

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私とほぼ同年代で、昨年春に亡くなったこの人の書物の中で、
最後の夏・秋・冬・春の章に立てて綴られたもの。

専門の用語ではなく、考えるとはどういうことかを、日常の言葉で語る
「哲学エッセイ」を確立しようとした人が、肉体の力が萎えていく中で、
いよいよ静かに澄む水のように思考を綴ったものだ。

静かに綴った、、といっても、キャッチコピーのようにひとことで
ここではつづれない、
それで、いいと思う。
あまりに多くのことが、「わかりやすく」提示されすぎて、
思考することがなくなっているように思うから。(自分を筆頭に)
わかりやすさを否定はしないけれど、わかりやすくないことにも、
考えるべきことはあると思うから。

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本の中に、イヌイットの伝説より、として一篇の詩が記されてあった。

「魔法のことば」
ずっと、ずっと大昔
人と動物がともにこの世に住んでいたとき
なりたいと思えば人が動物になれたし
動物が人にもなれた。
だから時には人だったり、
時には動物だったり、
互いに区別はなかったのだ。
そしてみんながおなじことばをしゃべっていた。
その時のことばは、みな魔法のことばで、
人の頭は、不思議な力をもっていた。
ぐうぜん口をついて出たことばが
不思議な結果を起こすことがあった。
ことばは急に生命をもちだし
人が望んだことがほんとにおこった―
したいことを、ただ口に出して言えばよかった。
なぜそんなことができたのか。
だれにも説明できなかった。
世界はただ、そういうふうになっていたのだ。
                  (訳 金関寿夫)

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YES, WE CAN.

アメリカという国に興味が持てず、むしろ自分がそうありたいと思うものの
反対のベクトルをもったその国の、大統領就任演説に聞き入った。
にわかオバマウォッチャーとしては、彼を礼賛も懐疑もここではしないけれど、
彼の言葉には、たしかに力があると思う。
HOPE とか、 CHANGE といった誰もがわかる言葉。
こんな単純な言葉を用いて、人の心を打つことができる人はそういないだろう。
それは、きっと、それを用いる文脈に作りごとがないから。
戦略から生まれた言葉ではなく、
心から思って出てきた言葉だから。(そう、あってほしいなぁ)

Yes We Can - Barack Obama Music Video
(大統領選挙を巡って、こんなVideoが作られるなんて、なんだかすごい。
アメリカ、好きになりそう?(笑))


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作り手の言葉が好きなのは、逡巡の手触りを感じるから。
今の時代に、迷わずにものづくりを生業としている人は少ないだろう。
それでも、迷いを喜びに変えていく過程に、明かりが灯る。
そのともし火に、何かを感じるから。
何か。
それも、キャッチコピーのようにここでは書かない。
けれどもその言葉も、きっと平易で、誰もが持っている言葉のはず。
そんなほんものの言葉を集めて、生きる力の詰まった一冊をいつか作ることができたら。
そんなことを、ずっと先の心の灯台にしているのです。

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