ヒナタノオト工芸帖

日本橋小舟町の工芸ギャラリー・ショップ「ヒナタノオト」の作品ノオト

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森文香さんの展示を前に

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今週16日(金)から染織作家の森文香さんによる展覧会「糸暦」が始まります。

一年ののち、再び森さんの作品展をヒナタノオトで迎えられること。
スタッフとともに、あらためて深く心に思いました。

昨年の2月22日、今の小舟町のヒナタノオトに移ったばかりで、
3月11日がやってきました。
ここ自体に大きな被害はなかったのですが、
余震が続き、停電があり、電車は定期運行されない中、
新らしい扉を開いた喜びなどすっかり失せて、
5月いっぱいまで契約が残っていた浜町との二箇所の舵取りをどうするか、
情報が錯綜する毎日の中、目の前のことを決断することで精一杯でした。

多くの店舗が営業を自粛していましたし、
実際あの日々の中、生活必需品を確保するのが精一杯で、
それ以外の新しいものを求める気持ちになど私自身持てなかったように思います。

けれど、開こう。
そう思いました。
この展覧会のために、どれだけ作家が制作に取り組んでいたか、
それを思えば、作家が「出来ない」と言わない限り、
開きたいと。
そして、あのような状況の中でも、たとえもし一人の方でも作品と出会いに行こう、
そう思ってくださったとしたら、
その出会いの場であることで十分ではないだろうかと。

開けてよかった。
どなたもいらっしゃらないかもしれない、、
それでも仕方ないと思っていましたが、
計画停電や電車の運行を考慮しながら、
訪ねてくださる方がほんとうに多かったのです。
そして、心をこめて作られた美しいものを前に、
見る人、手に取る人、まとう人の心が和らいでいくのが、
じん、と伝わってきたのでした。

同じ作り手、作家の方もたくさん来てくださいました。
「いつもどおりに開いている場所があって励まされた」
と言って。

生きることに精一杯な不安な状況の中、
「必需品」ではない「ものづくり」である仕事に
むなしさを感じた作家が多かったのです。
感受性が豊かな人たちは、あの状況の中で
どんなに心が揺れたことでしょう。

けれど、お互いが目を見て無事を確認しあい、
思いやる言葉を交わす。
そのことの場に、
作家たちが心澄ませて作ったものがあることの豊かさをしみじみ思いました。
そして、作るひとたちも、自分たちが生み出したものの「存在の確かさ」を心に刻んで
工房に戻っていかれたような気がします。


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(この画像、森文香さんよりいただきました)

「糸暦」
今回のタイトル。
森さんの布には、
森さんの日々の時間が現れている。
そんな気づきから付けさせていただきました。

それは草木といっそう寄り添った暮らしになられたこともですけれど、
そういった事柄を超えて、もっと広やかな意味で、
森文香さんという布を作る人は、
日々の心の姿を布に映していく人なのだと、
出会いをいただいてから5年以上経って、
私なりに、じわじわと感じたのでした。


金曜日からの作品展「糸暦」。
どんな「時間」を感じていただけるでしょうか。
手に取られた方の時間も積み重なって、
暦がゆたかに続いていくこと。
そんなことを願いながら、森文香さんの展示、
開きたいと思います。

:::

長くなってしまいますし、今回の展示の本筋とは離れるのですが、
書き留めておきたいので、「続き」に。

森文香さんの書かれたこちらのブログ☆にあった


「貴方の言葉は綺麗ごとばかりだ」というご意見を
ブログに対して頂いた事もあるのですが、
生かされている間に自分の口が発する言葉に限りがあることを思えば
その全てを出来る限り幸せなものにしたい。


という文章に目の前が晴れるようでした。

言葉は伝える道具だけれど、棘にも武器にもなる。
本音、であれば、どのように伝えてもいいものではないだろう。
言葉は言葉でしかない、とは思えないのです。
言葉はその人の今の姿でもあり、これからの姿を作っていくものでもあるから。

自分の限られたちっぽけな力で「作家の作品を紹介する」仕事をしているのだから、
自分の心で共感したり、心からリスペクトできる人の仕事を紹介していこう。
そう考えると、言葉や文章に思いやりや心遣いのある人と響いていきたい。
そんな風にあらためて思うのでした。

(美辞麗句やうわべだけの言葉、というのはその正反対で、
言葉や文章が達者ではない人から、訥訥と誠実さを伝えられたことが何度もあります。
ただ、率直さやある種の照れかもしれないけれど、
「雑」に使われた言葉と出会うと、気持ちまで雑になってしまう気がするのです。
何よりこの冬、あることで投げつけられた言葉の荒さ、文章の激しさに、
こんなに心が傷むのかと自分でも驚くほどでした。
たとえどんなことがあっても、あのような言葉や文章を人にぶつけてはいけない、
そう思ったのでした。)

日々の会話の中でも、私はつい言葉が雑になりがちです。
自分の発した言葉が、これからの自分の姿を作る。
その思いを忘れないように、この場に残したいと思います。

年が明けてからずっと心に雲がかかっていましたけれど、
春迎えのこの時に、言葉を大切に(生きることを大切に)する
森文香さんの作品展を開かせてもらえることが、
ほんとうにうれしいのです。

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